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コラム

見積書作成には要注意!下請業者が気を付けるべき重要ポイントとは?

建設工事請負契約の締結に先立って行われる見積りは、適正な請負価額の設定やダンピングの防止、下請人の保護等の観点から、適正に行われる必要があります

 

本稿では、建設工事の見積書の作成に関して下請人が元請人に主張できることについて、わかりやすく解説します。

もし見積書の作成に関連してなにかご不明点やお悩み事がございましたらどうぞお気軽にご相談ください。

 

1 元請人が下請人に対して見積条件を提示する際にはどのような事項を伝える必要がありますか?

 

元請人は、建設業法第20条第4項及びその制定趣旨により、下請人に対して、以下の各項目について具体的に提示しなければなりません。

 

なお、紛争防止の観点から、元請人が見積りを依頼する際は、下請人に対し工事の具体的な内容について、 口頭ではなく、書面によりその内容を示すべきであると考えられます。

 

①工事内容

  • 工事名称
  • 施工場所
  • 設計図書(数量等を含む)
  • 下請工事の責任施工範囲
  • 下請工事の工程及び下請工事を含む工事の全体工程
  • 見積条件及び他工種との関係部位、特殊部分に関する事項
  • 施工環境、施工制約に関する事項
  • 材料費、労働災害防止対策、建設副産物(建設発生土等の再生資源及び産業廃
  • 棄物)の運搬及び処理に係る元請下請間の費用負担区分に関する事項

②工事着手の時期及び工事完成の時期

③工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容

④請負代金の全部又は一部の前払金又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法

⑤当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め

⑥天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め

⑦価格等の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更

⑧工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め

⑨注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め

⑩注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期

⑪工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法

⑫工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容

⑬各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金

⑭契約に関する紛争の解決方法

 

 

なお、施工条件に関して具体的な内容が確定していない場合、元請人は、その旨を明確に示す必要があると解されています。

 

また、施工条件が確定していないなどの正当な理由がないにもかかわらず、元請人が、下請人に対して、契約までの間に上記事項等に関し具体的な内容を提示しない場合には、建設業法第20条第4項に違反すると考えられます。

 

2 元請人による情報提供に関して、留意すべき点はありますか?

 

建設業法第20条の2により、元請人は、当該下請工事に関し、以下の事象が発生するおそれがあることを知っているときは、請負契約を締結するまでに、下請人に対して、必要な情報を提供しなければなりません(建設業法施行規則第13条の11))。

 

 地盤の沈下、地下埋設物による土壌の汚染その他の地中の状態に起因する事象

 騒音、振動その他の周辺の環境に配慮が必要な事象

 

元請人が把握しているにも関わらず必要な情報を提供しなかった場合、建設業法第20条第4項及び第20条の2に違反することとなります。

 

3 元請人から見積依頼を受ける際の見積期間について制限はありますか?

 

元請人は、下請契約を締結する以前に、前述の具体的内容を下請人に提示し、その後、下請人が当該下請工事の見積りをするために必要な一定の期間を設けることが義務付けられています(建設業法第20条第4項)

 

このように建設業では、下請人が、力関係の強い元請人に急かされて、不利益な契約を締結することがないようにするため、見積りに要する期間が法定化されています。

 

つまり、元請人が下請人に対して、見積りを依頼する際に「今日中に見積書を提出してください」ということは認められていないのです。

 

そして、元請人が、見積依頼をする際は、予定価格に応じて、下表の期間を設ける必要があります(建設業法20条4項・建設業法施行令第6条)。

 

規模が大きい工事ほど、見積期間も長くなります。

なお、見積期間の日数計算の上で、元請人が見積条件を提示した日と、下請人が締結する日は除外されます。

 

また、上記の見積期間は、下請人が見積りを行うための最短期間であり、元請人は下請人に対し十分な見積期間を設けることが望ましいとされています。

 

4 元請人が見積りに関するルールに違反した場合に罰則はありますか?

 

見積りに関するルールに違反した場合であっても、元請人に懲役刑や罰金刑等の罰則はありません。

 

しかしながら、元請事業者が建設業法に違反していることを都道府県等に申告することで、都道府県が元請事業者に対して、行政上の指導・助言・勧告・措置命令・営業の停止命令等をしてくれるケースがあります(建設業法28条)。

 

特に、建設業法違反によって、元請事業者が公共事業の指名停止処分を受ける場合もありますので、元請事業者が公共工事を受注・施工しているようなケースでは効果が見込めます。

 

5 下請人は建設工事の見積書の作成に関して元請人に対してどのようなことを主張すべきですか?

 

以上を踏まえて、まず、下請人としては、まず、元請人に対して、「正確な見積もりを行うために施工条件を出来る限り早期に確定させて欲しい」と要請することが考えられます。

 

また、元請人から「今日中に見積書を提出して直ちに着工して欲しい」などと依頼されたとしても、下請人としては、「工事代金の額に応じて見積に必要な期間は法定されているので、最低限、その期間については待って欲しい」と伝えることが考えられます。

 

以上の交渉にかかる方針は、相手方との取引関係や、請負代金額等を踏まえて、決定していくことになりますが、弁護士に相談しながら検討することの方がより効果的であるケースが多いです。

 

6 まとめ

 

以上、建設工事の見積書の作成に関して下請人が元請人に主張できることについて整理しました。

 

相談は、無料で対応しておりますので、ご不明な点がございましたら、

お気軽に「お問い合わせフォーム」または「LINE」より当事務所までご連絡ください。

 

必ず1営業日以内にお返事いたします。

 

Beagle総合法律事務所

弁護士宮村頼光

 

【今回の記事の参考文献】

国土交通省不動産・建設経済局建設業課 建設業法令遵守ガイドライン(第9版)

この記事を書いた弁護士

宮村 頼光(みやむら よりみつ)

Beagle総合法律事務所

所属:東京弁護士会/日本CSR推進協会/欠陥住宅関東ネット

 

司法試験合格後、2018年に大手法律事務所であるTMI総合法律事務所に入所。インドのシリコンバレーといわれるバンガロールの法律事務所にて執務した経験や、複数社の役員としてゼロから事業を立ち上げた経験と実績を有する。

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