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コラム

中央区ならではの法的リスクとは?東京都中央区の建設工事ならではの問題について茅場町の弁護士が解説!

建設工事の施工にあたっては、工事を施工する土地の特性を理解し、地域ごとに定められた基準や手続を遵守する必要があります。

 

また、近隣住民への配慮を行い、地域の景観や文化への影響を抑えるためにも、地域ごとにどのような特徴を持っているのかを知ることは重要です

 

本稿では、弊事務所が居を構えている、東京都中央区(以下「中央区」と言います。)における建設業の特徴と注意点について説明します。

 

もし中央区内でお困りのことがございましたら、どんなご相談でも無料で対応いたしますのでどうぞお気軽にお尋ねください

1.東京都中央区の概要

 

中央区は、東京23区のほぼ中央に位置する行政区で、その大部分は江戸時代以降に埋め立てられた土地であり、起伏が非常に少ないことが特徴です。

 

面積は10.21平方キロメートルと23区の中で3番目に小さく、人口も令和5年時点で約174,000人と23区で2番目に少ない数字となっています

 

また、中央区は行政上、大きく分けて①日本橋地域②京橋地域③月島地域で構成されています。

 

各地域の特徴をそれぞれ説明します。

 

①日本橋地域

日本橋地域は日本橋茅場町・日本橋兜町、八重洲一丁目、日本橋浜町、日本橋蛎殻町、日本橋小舟町、日本橋本石町、日本橋室町、日本橋本町などの区域で構成されています。

 

現在、日本橋地域では大手デベロッパーが主体となって大規模な再開発計画が進められています。

 

例えば、三井不動産が主体となって進めている日本橋再生計画では、日本橋広域を「Greater日本橋」として、より魅力のあるエリアに再生するために非常に大規模な再開発が進められています。

 

参考:三井不動産 ニュースリリース

 

こうした大規模で複雑なプロジェクトにおいて建設事業者は、同業の事業者のみならず様々な専門業者や関係各所との連携を密に行う必要があり、高い実現力も求められます。

 

②京橋地域

京橋地域は八重洲二丁目、銀座、新富、築地、八丁堀、新川、入船、明石町、湊などの地区で構成されています。

 

京橋地域は、古くから栄えていたエリアのため、「景観上重要な歴史的建造物」や「東京都選定歴史的建造物」に指定されている建造物などをはじめとする歴史的建造物が数多くあります。

 

例えば、築地本願寺、聖路加病院、などが有名な建造物ですが、その他にも様々な学校施設や橋梁、百貨店なども建物も重要な文化財として認定されています。

 

また、日本で一番地価が高いとされている銀座を筆頭に、京橋地域は地価が高いエリアが広く分布しています。

 

近年ではインバウンド観光の回復もあり、依然として銀座は高級志向の消費者と惹きつける主要な商業エリアであるため、引き続き土地の価格も高い水準のまま推移していくでしょう。

 

③月島地域

月島地域は、月島、晴海、勝どき、豊海町という町で構成されていますが、現在急速にタワーマンションの建設が進んでおり、いまだに多くの建設需要が生まれている地域です。

不動産経済研究所によると、過去十年間での新築マンションの供給戸数は東京23区の中で最多の1万7870戸となっています。

 

こういった影響もあり、2023年には中央区の人口はこれまでで最多の数字となっており、今後も引き続きタワーマンションの新築工事が進められていくことが予想されます。

 

加えて、築年数が古くなってきた既存のタワーマンションの修繕工事数も増えていくことも想定されます。

 

2.中央区の建設業

 

次に、中央区における建設業者の特徴についてご説明します。

 

令和3年の経済センサスによると中央区内には998の建設業事業所が存在し、従業員別の内訳は以下の構成となっています。

出典:中央区「産業大分類別従業者規模別民営事業所数および男女別従業者数」

 

総事業所数としては東京23区の平均(1273)をやや下回っていますが、多くの従業員を抱えるゼネコンから、高い技術を有する専門工事事業者、一人親方まで幅広い建設事業者が所在しています。

 

中央区では、商業施設、オフィスビル、ホテル、住宅、公共施設など、さまざまな種類の建設プロジェクトが行われています。

そのため、幅広い建築タイプに対応できる柔軟性を持つ事業者が多いです。

 

3.中央区の建設工事施工にあたっての注意点

 

中央区における建設工事の特徴と注意点を説明します。

 

【人の往来、交通量の多い地域での工事】

いかなる場所で工事を施工するにおいても、行政への手続を滞りなく行う必要がありますが、特に中央区のような交通量や人の往来が非常に多いエリアでは、工事中の交通規制や騒音対策、安全管理が厳しく求められます。

 

例えば、騒音や振動に関する届出、仮囲い設置の許可、重機の使用許可など、各種の許認可や届出が区ごとに必要です。これも区によって手続の詳細や要求される書類が異なることがあります。

 

参考:中央区「中央区建築物の解体工事の事前周知に関する指導要綱について」

 

さらに、事故防止や労働者の安全確保に関して、厳密な管理体制を持つことも強く求められます。

 

建設工事において適切な行政手続を怠ってしまうと、工事停止命令が下される等の罰則が科されるリスクを招いてしまうため、下請業者は事前に必要な手続を十分に理解し、必要な許認可を確実に取得しておくことが良いでしょう。

 

【大規模なプロジェクトにおける工事】

例えば日本橋で進んでいるような大規模な再開発プロジェクトのような建設計画に参加するにあたっては、高度な建設技術と専門知識のみならず様々なスキルが求められます。

 

その中でも特に関係者間の調整・コミュニケーションを円滑に行うことは非常に重要となります。

なぜならば、多くの業者が関係する現場においては法的なリスクが通常の現場以上に高まるためです。

 

例えば、工期の遅延や施工不良、追加変更工事等によるトラブルは、大規模なプロジェクトにおいては影響が広範囲に渡ってしまうため、下請業者は時に高額な賠償を請求されてしまうケースも想定されます。

 

こういったリスクを事前に回避するためには、契約内容を明文化し、下請業者としての責任の範囲を明確にしておく必要があり、専門家の指示を仰ぐことでより確実にリスクを避けることができるでしょう。

 

【歴史的建造物の工事】

各区には、歴史的建造物の保存や景観保護に関する独自の規制がある場合があり、これにより、特定のエリアでの建設に際して追加の許可が必要となることがあります。

 

特に文化財に指定されている建造物については「文化財保護法」の適用を受ける他、周辺の景観も各自治体の定める条例によって保護される場合があります。

 

中央区については、独自の景観条例・要項等は定められていませんので、区に景観に関する届出を行う必要はありませんが、銀座や日本橋などのエリアについては「デザイン協議会」が設置されており、建築物等の新築・増築・改築・大規模修繕にあたっては、事前に協議会との協議が必要となります。

 

参考:中央区「景観について」

 

こうしたエリアで施工を行う建設業者には、地域住民や行政との協議を重視し、景観や地域特性に合致するデザインを提供する能力が求められます。

 

また、事前に十分な協議や説明が行われなかった場合、地域住民からの反対運動や訴訟を受けるリスクも高まりますので、着工前の準備として確実に同意を得ておくことがよいでしょう。

 

【高層マンションや地価が高い地域での工事】

月島地域で高層マンションに関連する工事の施工数増加が見込まれることについてご説明しましたが、こうした高層マンションにおける工事の施工にあたって特段に注意するべき事項について、足場工事を例に解説します。

 

一般的に建物の外壁の修繕工事は、外側に鋼製の仮設足場を組み立てて行われますが、タワーマンションにおいて高層階まで足場を組み立てると、部材の落下や作業員の滑落等の事故のリスクが高まると同時に、下層階の採光や通風に長期的に影響を及ぼしてしまうため、移動昇降式足場やゴンドラを用いるケースが多いです。

 

移動昇降式足場やゴンドラは上下左右への移動に時間がかかる他、一度に作業を行うことができる作業員の数も限られるため、工期が長引きます

 

また、高層階での作業は強風など天候の影響を受けやすいため工事が行えない日も多く、さらに工期が伸びてしまう原因になります。

 

また、一方で銀座(京橋地域)のように地価が高い場所は一般に敷地が狭いことが多く、工事に必要な機材や建材を一時的に保管する場所の確保が難しい場合などがあります。

 

この場合も同様に、作業効率が落ちてしまい工期が長引いてしまうことが想定されます。

 

このように、工期が延長してしまうと遅延損害金が請求されてしまう等の法的リスクが生じてしまうことがあります。

 

そうした事態を避けるためには、事前の計画作成を徹底的に行い、限られた作業時間の中で効率的に工事を進められる高い技術と連携力が建設事業者には求められます。

 

また、請負契約の内容をしっかりと整備しておくことも重要です。

 

請負契約の締結にあたって下請業者が知っておくべきポイントについてはこちらの記事にて整理しましたのでご覧ください。

 

参考:建設工事請負契約の落とし穴!下請業者が知っておくべき契約のポイント

 

4.中央区の弁護士に依頼するメリット

 

ここまで、中央区における建設工事の特徴について説明しました。

 

これらの特徴は法的なトラブルが発生するリスクを高めることがあり、万が一トラブルが発生した場合には、地元の弁護士に依頼することで迅速かつ的確な対応が期待できます。

 

その主な理由を3点、中央区に弁護士に依頼するメリットとして以下に整理しました。

 

①迅速な対応が可能

中央区内で活動する弁護士であれば、特に緊急性が高い問題が発生した際に、早急に面談や現地視察を行うことができ、対応が遅れることを防ぐことができます。

 

②裁判や調停のスムーズな進行

万が一建設紛争から裁判や調停に発展した場合に、地元の弁護士であれば管轄裁判所の手続に慣れており、期日にも柔軟に対応することが可能です

 

③地域の法規制や慣習に精通している

例えば、中央区特有の建築基準や条例に関する知識を持っており、これに基づいて的確な法的アドバイスを提供できます。

地元ならではの実務的な知識を持つ弁護士に依頼することで、スムーズな対応が可能です。

5.まとめ

 

以上、ここまで中央区の特徴と、中央区において工事を施工するにあたり留意するべき事項について説明しました。

 

このように、各地域での工事を滞りなく進めるためには、地域に特有の事情や手続を正しく理解し、施工の在り方を検討する必要があります。

 

そのためには、事業者間のネットワークを強化し、様々なチャンネルで情報を収集するスキームを社内に構築することが肝要です。

 

その上で、どうしても避けれないトラブルが発生した際には、その対応を近隣の弁護士に依頼することをお勧めします。

 

相談は、無料で対応しておりますのでご不明な点がございましたら、

お気軽にお問合せフォームまたはLINEより当事務所までご連絡ください。

 

必ず1営業日以内にお返事いたします。

 

 

Beagle総合法律事務所 宮村/尾崎

宮村 頼光(みやむら よりみつ)

Beagle総合法律事務所

所属:東京弁護士会/日本CSR推進協会/欠陥住宅関東ネット

司法試験合格後、大手法律事務所であるTMI総合法律事務所に入所。建設業界の人事/労務/法務の諸制度の整備を得意とし、年商5億の建設会社を3年で年商20億まで成長させた実績を有する。

尾崎 太志(おざき たいし)

Beagle総合法律事務所

慶應義塾大学卒業後、国立大学法人や公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会での勤務を経て、2022年に入所。中小企業へのビジネス・財務・法務面のサポートを全面的に担う。

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