コラム
是正工事の指示を受けたら無料で対応しないといけない?下請人が是正工事の費用を元請人に請求できる場合について徹底解説!
下請人が工事を完工させたあとに、元請人より是正工事を命じられるケースは実務的によくあり、当事務所でも以下のようなご質問をお受けすることがあります。
【下請人からよく相談を受ける法律問題一覧】
①元請人からの是正指示は全て対応しないといけないのですか?
②是正工事は下請人が全て無料で対応しないといけないのですか?
③是正工事を施工する際に下請人としては何に注意したらいいですか?
本稿では、当事務所が実際に受けたことのあるご質問をもとに、下請人からよく相談を受ける法律問題について解説していきます。
もし実際に同じようなお悩みをお持ちの方がいらっしゃいましたら、当事務所では初回の相談を無料で行っておりますので是非お気軽にお問合せください。
目次
Toggle1 元請人からの是正指示は全て対応しないといけないのですか?
是正工事とは、一般的に、下請人が施工した工事に誤りがあった場合等にこれを直す工事を言い、他に修補工事、やり直し工事、手直し工事、ダメ工事などとも言われます。
そして、元請人による是正工事の指示のうち、下請人が対応する必要があるものの範囲については、実務的によく元請人・下請人間で紛争となります。
下請人が対応する必要がある是正工事の範囲については、下請人が施工した工事が、元請人と合意した請負契約の内容に適合しているかどうかが判断基準となります。
そこで、まずはこの、契約の内容に適合しているかどうか、すなわち、契約不適合の概念について説明します。
請負契約における契約不適合とは、一般的に、請負契約に基づき完成された工事の目的物が、契約により有すべきものとされた種類又は品質を備えていないことをいいます(民法第636条)。
契約不適合の判断にあたっては、元請人と下請人との間でどのような合意があったか、どのような契約をしたのかが重要です。
そして、契約内容の確定にあたっては、設計図、技術水準、見積書、内訳書、社会通念、等が考慮されますが、実務的には個々の工事ごとに判断していくことになります。
たとえば、契約上、建物の耐震性を高め、耐震性の面でより安全性の高い建物にするため、南棟の支柱につき断面寸法300mm×300mmの鉄骨を使用することが、当事者間で特に約定され、これが重要な契約の内容になっていた場合、当該建物が構造的に安全であり、機能的・品質的に同等であっても、当事者が重要視した合意内容に違反しているため、契約不適合(瑕疵)にあたるとした判例があります(最判平成15.10.10判時1840号18頁)。
したがって、「元請人からの是正指示は全て対応しないといけないのですか?」という質問に対する回答は、
「個々の工事ごとに、元請人と下請人との間でどのような合意があったかを、設計図等の資料を踏まえて判断し、元請人の指示が、請負契約に適合させるための指示であれば無償で対応する必要があり、それ以外については原則として対応する必要がない。」
となります。
2 是正工事は下請人が全て無料で対応しないといけないのですか?
まず、下請人が、元請人と合意した請負契約内容に違反した工事を施工してしまった場合は、原則として、下請人が無料で是正工事に対応する必要があります。
一方で、そのような事情がなく、下請人に何らの責任がないにもかかわらず、元請人が、是正工事を指示した場合には、その工事代金は元請人が負担することが必要です。
すなわち、下請人の責めに帰すべき理由があるとして、元請人が工事代金を全く負担することなく、下請人に対して工事の是正を求めることができるのは、下請人の施工が契約書面に明示された内容と異なる場合又は下請人の施工に瑕疵等がある場合に限られます。
3 是正工事を施工する際に下請人としては何に注意したらいいですか?
(1)施工内容に違和感があれば、都度、元請人に内容の確認を求める
施工が契約書面に明示された内容と異なる場合であっても、次の場合には、元請人が是正工事の工事代金を全額負担する必要があると解釈されています。
ア 下請人から施工内容等を明確にするよう求めがあったにもかかわらず、元請人が正当な理由なく施工内容等を明確にせず、下請人に継続して作業を行わせ、その後、下請工事の内容が契約内容と異なるとする場合
イ 施工内容について下請人が確認を求め、元請人が了承した内容に基づき下請人が施工したにもかかわらず、下請工事の内容が契約内容と異なるとする場合
したがって、下請人としては、施工内容に違和感があれば、都度、元請人に内容の確認を求め、その確認内容を証拠として残すことが重要です。
(2)当初契約の変更についての契約書を作成する
請負人が、下請人の責めに帰さない是正工事を下請人に依頼する場合は、当初契約の変更が必要です。
元請人が、このような契約変更を行わず、是正工事を下請人に施工させた場合には、建設業法第19条第2項に違反する可能性が高いです。
是正工事に関して、下請人が作成しておくべき書面に関しては、こちらの記事をご覧ください。
参考:追加工事のトラブルを防ぐ!下請業者が作成すべき重要書類とは?
なお、下請人の責めに帰すべき理由がないのに、その工事代金を一方的に下請人に負担させる是正工事によって、下請代金の額が、当初契約工事及び是正工事を施工するために「通常必要と認められる原価」に満たない金額となる場合には、建設業法第19条の3の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがあります。
(3)日頃の施工指示の内容について証拠を残す
下請工事の是正が発生しないように、下請人としても、工事の施工に関し十分に元請人と協議を行い、必要に応じて文面で施工指示の内容について証拠を残すようにしましょう。
下請人として、下請工事の是正が発生しないように日々気を付けることについては、元請事業者から追加・変更工事の工事代金を回収するために下請事業者が日々行うべきことで整理していますので是非ご覧ください。
参考:追加工事代金を確実に回収するための4つの重要チェックポイント
もし既に着工している是正工事の内容等に関して元請人との間でトラブルが発生してしまっている場合には早急に専門家に対応を相談することがよいでしょう。
当事務所では無料で相談をおこなっておりますのでどうぞお気軽にお問合せください。
4 まとめ
以上、下請人が是正工事として対応する必要のある工事の範囲について整理しました。
相談は、無料で対応しておりますので、ご不明な点がございましたら、
お気軽に「お問い合わせフォーム」または「LINE」より当事務所までご連絡ください。
必ず1営業日以内にお返事いたします。
【今回の記事の参考文献】
国土交通省不動産・建設経済局建設業課 建設業法令遵守ガイドライン(第9版)
松本克己、齋藤隆、小久保孝雄 編 建築訴訟[第3版](専門訴訟講座)令和4年11月30日
この記事を書いた弁護士
宮村 頼光(みやむら よりみつ)
Beagle総合法律事務所
所属:東京弁護士会/日本CSR推進協会/欠陥住宅関東ネット
司法試験合格後、2018年に大手法律事務所であるTMI総合法律事務所に入所。インドのシリコンバレーといわれるバンガロールの法律事務所にて執務した経験や、複数社の役員としてゼロから事業を立ち上げた経験と実績を有する。