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コラム

工事原価をしっかり管理するために知っておきたい3つのポイント

本稿では、建設業の経営判断において非常に重要になる

「工事原価管理」について整理します。

 

原価管理の目的は、原価を正確に把握し分析することで利益を確保することにあります。

 

建設業では、各現場単位で生じる原価と、得られる利益を見える化することで、正しい経営判断が行えるようになります。

また、建設会社は建設業法施行規則(昭和24年建設省令第14号)によって定められた様式によって財務諸表を作成することが義務付けられており、そのためにも正しい原価管理の方法を学ぶことが必要です。

 

原価管理は、あらゆる業種において行われているものですが、特に建設業の原価管理は業界の特徴を反映した、とても煩雑なものとなっています。

主に注意しなければならないポイントは以下の3つです。

 

①完成工事原価と未成工事支出金

②外注費

③間接工事費と配賦

 

それぞれのポイントについて、以下で説明します。

 

ポイント①完成工事原価と未成工事支出金

 

工事原価は、主に「完成工事原価」と「未成工事支出金」に分類されます。

 

建設工事においては、工事期間が長期に渡ることも珍しくありません。

複数年度をまたいで工事が行われる場合には、まだ完成していない工事にかかった経費を一時的に計上するための勘定科目として「未成工事支出金」を用います。

 

これは建設業会計に特有の勘定科目です。

 

そして、未成工事支出金は、工事が完成したタイミングでまとめて経費計上する「工事完成基準」や、工事の進捗度合いに応じて期末ごとに経費計上する「工事進行基準」といった基準に乗っ取って処理され、完成工事原価に計上されます。

 

2021年4月1日以降開始する事業年度から収益認識基準が適用されるようになったため、こちらの会計処理には注意が必要です。

 

ポイント②外注費

 

一般的な原価計算では、「材料費」「労務費」「経費」の3つを計上しますが、建設業ではそれに加えて「外注費」も考慮しなければなりません。

建設業界においては、それぞれの項目は以下のような内容となっています。

 

材料費

木材などの材料、そして製品を購入した費用です。各現場で購入した材料の費用は材料費に計上されます。

 

労務費

工事現場の作業員や職人に支払われる給料や手当です。自社職人の現場での人工が該当します。また、自社の人員を協力会社の人員で補充して作業した場合も労務費に含まれます。

 

外注費

発注先の法人への支払い、独立した個人事業者(いわゆる一人親方)などへの業務委託で発生する費用などです。

工事現場の中で協力会社に作業を外注した工事の費用は、外注費に計上されます。

協力会社が用いた道具や材料の費用、人件費、交通費等も外注費となります。

 

経費

減価償却費や賃借料、事務用消耗品、設計者・技術者給料手当、公害防止費など、材料費・労務費・外注費に該当しない原価は全て経費となります。

 

ポイント③間接工事費と配賦

 

工事原価は、現場ごとに正確に集計する必要があります。

材料費や職人の給料など、工事の施工そのものに直接かかる費用のことを「直接工事費」と呼びます。

 

一方で、施工そのものではなく間接的に発生する費用のことを「間接工事費」と呼びます。

間接工事費の中には、「共通仮設費」「現場管理費」「一般管理費」が含まれています。

 

共通仮設費は、各現場に臨時に建てられる倉庫や事務所、工事後の後片付けなどにかかる費用です。

現場管理費は、現場監督の給与や現場で使用する機器の購入に要する費用です。

一般管理費は、その他会社を経営するために必要な経費です。

 

これらは「共通費」とも呼ばれ、各企業によって定める配賦基準に従って各現場の工事原価に割り振る必要があります。

複数の現場にまたがって共有する間接原価を、公平に各現場に分担されるため、この配賦基準については慎重に検討する必要があります。

 

どのような配賦基準を用いるかについては、企業の特性によって異なりますが、

主に各現場の売上高や直接工事費などの金額基準、稼働時間による時間基準などを通して共通費全体を各現場の原価として割り振るパターンが一般的です。

 

ここまで建設業における原価計算の特徴について簡単に整理しました。

次に、実務上の原価管理のポイントについて整理します。

 

実行予算の作成

 

毎月上がってくる請求書を集計して原価を把握していたのでは、赤字の発見が遅れてしまいます。

そこで、着工前に各現場の原価目標や利益目標を設定し、各目標が達成できるように予算を作成する必要があります。

 

実行予算の作成にあたっては、まず想定される工事原価を積算します。

建築物や構造物の特徴や資材相場の変動など、原価は様々な要素に影響を受けるため、積算にあたっては高度な知識や経験が求められます。

そして、積算結果に諸経費や利益を加算した金額が見積となります。

 

現場担当者の原価意識

 

建設工事では、ランダムに様々な事態が発生するため、当初予想していた原価通りに施工が進まず、そのような状態で原価を管理しなければならないのは各現場の担当者、責任者です。

 

現場の状況を最も把握している現場責任者が原価意識を持ってコスト管理に取り組むことで、責任者自身の管理能力向上にもつながります。

 

予算実績の管理と現場改善

 

受注時に作成した実行予算に対して、工事が進むにつれて実績原価の値が積み上げられていきます。

未成工事について確認した時に、目標となる利益率を達成できなさそうな場合には実行原価と予算を比較しながら無駄な支出を減らしていくなどの対処をしなければなりません。

 

そういった振り返りを行うために、経理と現場が連携を取りながら日々発生する工事原価の支払の実績を蓄積し、共有していかなればなりません。

そして、実行予算と乖離が見られる支出項目については現場の改善を通じて減らしていかなければならないのです。

 

本稿のまとめ

 

これまで原価計算と原価管理のエッセンスについて簡単に整理しましたが、実際の原価管理はやはり様々な諸要素が絡みあうため、大変複雑なものになります。

 

日常の業務の中で必要な数字を適切に吸い出すためには、どのような方法での原価管理を行うかの枠組みを定めた後に、経営者、各現場管理者(職長)、職人、バックオフィスに携わる全ての従業員が深く工事原価と管理について理解することが重要です。

 

当事務所では、建設業向けに原価管理のサポートも行っております。

相談は、無料で対応しておりますので、ご不明な点がございましたら、

お気軽に「お問い合わせフォーム」または「LINE」より当事務所までご連絡ください。

必ず1営業日以内にお返事いたします。

 

Beagle総合法律事務所 弁護士宮村/尾崎

宮村 頼光(みやむら よりみつ)

Beagle総合法律事務所

所属:東京弁護士会/日本CSR推進協会/欠陥住宅関東ネット

司法試験合格後、大手法律事務所であるTMI総合法律事務所に入所。建設業界の人事/労務/法務の諸制度の整備を得意とし、年商5億の建設会社を3年で年商20億まで成長させた実績を有する。

尾崎 太志(おざき たいし)

Beagle総合法律事務所

慶應義塾大学卒業後、国立大学法人や公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会での勤務を経て、2022年に入所。中小企業へのビジネス・財務・法務面のサポートを全面的に担う。

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