コラム
元請業者が工事代金を支払わない場合に使える法的手段とは?建設業法の基礎知識
一般的な業種における下請取引については、下請法(下請工事代金支払遅延等防止法)が適用されます。
ところが、建設工事の下請取引については、下請法(下請工事代金支払遅延等防止法)の対象から明確に除外されており(第2条第4項参照)、建設業法のみが適用されます。
これは、建設工事の下請取引については、他の業態の下請取引とは異なる規制が必要であるためであると考えられます。
このように建設工事の下請取引については、建設業法により特別に保護されているのです。
本稿では、建設業法固有の規定を根拠として、元請人が下請工事代金を支払わない場合に下請人が建設業法上主張できることについて解説します。
元請人から工事代金の支払いを受けられずお困りの方は是非当記事をお読みいただき、お気軽に当事務所までご相談ください。
目次
Toggle1 元請人が下請工事代金を長期間支払わなかった場合について、建設業法どのように定められていますか?
まず、下請工事代金については、元請人と下請人の合意により交わされた下請契約に基づいて適正に支払われる必要があります。
その上で、建設業法上も以下の規定があります。
まず、建設業法第24条の3では、元請人が注文者から請負代金の出来形部分に対する支払い又は工事完成後における支払いを受けたときは、下請人に対して、元請人が支払を受けた金額の出来形に対する割合及び下請人が施工した出来形部分に相応する下請工事代金を、支払いを受けた日から1月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払わなければならないと定められています。
さらに、元請人が特定建設業者である場合には、次の規定が適用されます。
すなわち、建設業法第24条の6では、元請人が特定建設業者であり下請人が一般建設業者(資本金額が4000万円以上の法人であるものを除く。)である場合、発注者から下請工事代金の支払があるか否かにかかわらず、下請人が引渡しの申出を行った日から起算して50日以内で、かつ、できる限り短い期間内において期日を定め下請工事代金を支払わなければならないと定められています。
そのため、特定建設業者の下請工事代金の支払期限は、注文者から出来高払又は竣工払を受けた日から1か月を経過する日か、下請人が引渡しの申出を行った日から起算して50日以内で定めた支払期日のいずれか早い期日となります。
したがって、工事が完成し、元請人の検査及び引渡しが終了後、正当な理由がないにもかかわらず、元請人が、以上の法令に定める期日内に下請工事代金の一部を支払わないことは、建設業法第24条の3又は同法第24条の6に違反します。
2 元請人が下請工事代金を支払わない場合の遅延損害金の利率が年利14.6%になるって本当ですか?
元請人・下請人間で特段の合意がない場合、下請工事代金が支払われない場合の法定利率は、年利3%に留まります(民法第404条第2項)。
ところが、以下の要件を満たした場合、下請工事代金についての遅延利息は、年利14.6%まで増加します(建設業法第24条の4第2項、24条の6第1項・第4項、建設業法施行令第14条)。
①下請工事の施工当時、元請人が特定建設業者であり、かつ、下請人が特定建設業者でなく、かつ、資本金額が4000万以上の法人ではなかった(建設業法第24条の6第1項括弧書き、建設業法施行令第7条の2)こと
②下請人が、下請工事について、工事の完成後、元請人に対して目的物の引渡しについての申し出を行ったこと(建設業法第24条の4第2項本文)
そのため、下請人が、元請人に対して、留保されている下請工事代金の支払い請求する場合、以上の要件を満たすかを検討し、満たす場合には、遅延損害金の利率を年利14.6%として請求することを忘れないように注意しましょう。
3 まとめ
以上、元請人が下請工事代金を支払わない場合に下請人が建設業法上主張できることについて整理しました。
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Beagle総合法律事務所
弁護士宮村頼光
この記事を書いた弁護士
宮村 頼光(みやむら よりみつ)
Beagle総合法律事務所
所属:東京弁護士会/日本CSR推進協会/欠陥住宅関東ネット
司法試験合格後、2018年に大手法律事務所であるTMI総合法律事務所に入所。インドのシリコンバレーといわれるバンガロールの法律事務所にて執務した経験や、複数社の役員としてゼロから事業を立ち上げた経験と実績を有する。