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コラム

安全協力会費を勝手に引かれてしまった…請負代金が相殺されてしまった時に元請人に主張できる事項

下請人が工事の完成に伴い請求書を送付し、その後、入金期日に銀行口座を確認したら「安全協力会費」等の名目で請負代金額が減額されてしまった、といったケースが実務的に発生します。

 

この減額は、いわゆる赤伝処理(相殺)とよばれるもので、当事務所でも、このような一方的な赤伝処理に対して下請人として何か反論できないか、とのご質問をお受けすることがあります。

 

そこで、本稿では、赤伝処理に関する法律問題について解説していきます。

 

細かなご質問や具体的な案件のご相談等ございましたら、どなたでも初回の相談を無料で対応いたしますので、どうぞ当事務所までお気軽にお問合せください。

 

 

1 赤伝処理とはなんですか?

まず、赤伝処理とは、元請負人が、たとえば、以下の費用を下請人への請負代金の支払時に請負代金から差引く行為をいいます。

 

① 一方的に提供・貸与した安全衛生保護具等の労働災害防止対策に要する費用

② 下請代金の支払に関して発生する諸費用(下請代金の銀行振込手数料等)

③ 下請工事の施工に伴い、副次的に発生する建設副産物の運搬費用・処理費用

④ 上記以外の諸費用(駐車場代、弁当ごみ等のごみ処理費用、安全協力会費並びに建設キャリアアップシステムに係るカードリーダー設置費用及び現場利用料等)

 

そして、赤伝処理の法的性質は相殺(民法第505条第1項)であると考えられます。

 

2 元請人は一方的に赤伝処理を行うことができるのですか?

 

まず、民法上、相殺は、「二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合」(民法第505条第1項)にのみ行うことができます。

 

そのため、元請人が、一方的に下請人の同意なく、相殺、すなわち、赤伝処理を行うことはできません。

 

すなわち、赤伝処理を行うためには、その内容や差引く根拠等について元請負人と下請負人双方の合意が必要です。

 

3 赤伝処理を行うことは、建設業法上、問題ないのですか? 

 

さらに、赤伝処理を行うことは、建設業法上も問題となり得ます。

まず、赤伝処理を行う場合には、元請負人は、その内容や差引額の算定根拠等について、見積条件や契約書面に明示する必要があります。

 

赤伝処理の具体的な内容を見積条件に明示しなかった場合については建設業法第20条第4項に、これらの事項を契約書面に記載しなかった場合については同法第19条にそれぞれ違反します。

 

なお、赤伝処理に関する元請下請間における合意事項については、駐車場代等の建設業法第19条の規定による書面化義務の対象とならないものについても、後日の紛争を回避する観点から、書面化して相互に取り交わしておくことが望ましいと考えます。

 

加えて、赤伝処理として、元請負人と下請負人双方の具体的な合意がないまま元請負人が一方的に諸費用を下請代金から差引く行為は、その情状によっては、建設業法第28条第1項第2号の請負契約に関する不誠実な行為に該当し、国土交通大臣等による指示処分の対象となる可能性もあります。

 

4 下請人との合意があれば適法に赤伝処理を行えるということですか?

 

赤伝処理は、下請負人に費用負担を求める合理的な理由があるものについて、元請負人が、下請負人との合意のもとで行えるものです。

 

しかしながら、下請人の合意があればどのような内容でも赤伝処理が行えると考えるべきではなく、元請人は、赤伝処理による費用負担が、下請負人に過剰なものとならないよう十分に配慮することが望ましいと考えます。

 

また、元請負人は、赤伝処理を行うに当たっては、差引額の算出根拠、使途等を明らかにして、下請負人と十分に協議を行うとともに、当該費用の収支について下請負人に開示するなど、その透明性の確保に努めるべきであるといえます。

 

5 下請人は赤伝処理に関して元請人に対してどのようなことを主張すべきですか?

 

以上を踏まえて、まず、下請人としては、元請人との請負契約締結の交渉時に、赤伝処理される項目及び金額について十分に協議し、不合理なものについては、受け入れられない旨伝え、請負契約書上も合意しない、といった対応を執る必要があります。

 

また、請負契約書上合意していない項目について、一方的に赤伝処理をされてしまった場合には、以上で説明した法的根拠をもとに、当該赤伝処理は受け入れらない旨反論し、請負代金の全額の支払いを請求するよう交渉することが考えられます。

 

以上の交渉にかかる方針は、相手方との取引関係や、赤伝処理をされた金額等を踏まえて、決定していくことになりますが、弁護士に相談しながら検討することの方がより効果的であるケースが多いです。

 

何か疑問点やお困りのことがございましたらどうぞお気軽にご相談ください。

6 まとめ

 

以上、下請人が赤伝処理に関して元請人に対して主張するべき内容について整理しました。

 

相談は、無料で対応しておりますので、ご不明な点がございましたら、

お気軽に「お問い合わせフォーム」または「LINE」より当事務所までご連絡ください。

必ず1営業日以内にお返事いたします。

 

【今回の記事の参考文献】

国土交通省不動産・建設経済局建設業課 建設業法令遵守ガイドライン(第9版)

 

この記事を書いた弁護士

宮村 頼光(みやむら よりみつ)

Beagle総合法律事務所

所属:東京弁護士会/日本CSR推進協会/欠陥住宅関東ネット

 

司法試験合格後、2018年に大手法律事務所であるTMI総合法律事務所に入所。インドのシリコンバレーといわれるバンガロールの法律事務所にて執務した経験や、複数社の役員としてゼロから事業を立ち上げた経験と実績を有する。

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